副業をしたいと思っている人は多いでしょう。しかし、多くの企業では副業が禁止されています。なぜ企業は副業を禁止するのでしょうか？副業禁止の背景や理由、そして最近の副業解禁の動きについて解説します。
目次
副業禁止の背景：日本国憲法と労働法は副業をどう規定しているか
まず、日本国憲法と労働法は副業についてどう規定しているのでしょうか？
日本国憲法では、第22条で「すべて国民は、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有する」と定められています。
これは、国民が自分の意思で好きな仕事を選ぶことができるということを意味します。
これは、国民が自分の意思で好きな仕事を選ぶことができるということを意味します。
したがって、副業も日本国憲法における職業選択の自由の範囲内であると考えられます。
一方、労働法では、副業に関する条項はありません。
しかし、労働契約法や民法などに基づいて、雇用主と従業員の間に就業規則や契約書が結ばれます。
この中で、副業が禁止されている場合があります。
また、本業に支障を及ぼす場合や企業秘密が漏洩する場合などは、雇用主が副業を制限することができます。
これは、雇用主が従業員に対して忠実義務や秘密保持義務などを課すことが可能だからです。
副業禁止の理由：企業が副業を認めない4つの主な理由とは
では、具体的に企業が副業を禁止する理由は何でしょうか？
ここでは、4つの主な理由を紹介します。
長時間労働・過重労働を防ぐため
一つ目の理由は、長時間労働・過重労働を防ぐためです。
日本では、長時間労働が社会問題となっており、過労死や過労自殺などの悲惨な事例も多く報告されています。
企業は、従業員の健康や安全を守る責任があります。
そのため、本業以外にも仕事をすることで、従業員の負担が増えることを防ぎたいと考える場合があります。
労働時間の管理・把握が困難になるため
二つ目の理由は、労働時間の管理・把握が困難になるためです。
企業は、従業員の労働時間を正確に記録し、法令や契約に基づいて給与や残業代を支払う必要があります。
しかし、副業をする場合、本業と副業の労働時間の区別が曖昧になる可能性があります。
例えば、副業をするために本業の時間を削ったり、本業と副業を同時に行ったりする場合などです。
このような場合、企業は従業員の労働時間を正しく管理・把握できなくなり、法的なトラブルに巻き込まれるリスクが高まります。
情報漏洩・技術流出のリスクがあるため
三つ目の理由は、情報漏洩・技術流出のリスクがあるためです。
企業は、自社の商品やサービスに関する情報や技術を秘密に保つことで、競争力を維持しようとします。
しかし、副業をする場合、従業員が本業で得た情報や技術を副業で使ったり、他社に漏らしたりする可能性があります。
これは、企業にとって大きな損失や損害につながります。
利益相反・競業のリスクがあるため
四つ目の理由は、利益相反・競業のリスクがあるためです。
企業は、従業員が自社の利益に反する行為をしないことを期待します。
しかし、副業をする場合、従業員が本業と同じ分野や関連する分野で仕事をしたり、本業の顧客や取引先と関係を持ったりする可能性があります。
これは、企業の利益に対する脅威となります。
副業解禁の動き：大手企業も副業を薦めるようになってきた
一方で、近年では副業解禁の動きも見られます。政府や大手企業も副業を推進するようになってきています。
政府が推進する働き方改革の一環として、モデル就業規則が2018年に改定された
政府は、働き方改革の一環として、モデル就業規則を2018年に改定しました。
モデル就業規則とは、労働基準法第89条で定められたもので、厚生労働省が作成し公表している就業規則の例です。
多くの企業は、このモデル就業規則を参考にして自社の就業規則を作成しています。
モデル就業規則では、副業に対する方針が「原則禁止」から「原則容認」に変更されました。これは、「職務上知り得た秘密等を漏らすおそれがある場合」や「会社又は他の従業員と利益関係又は競争関係にある者と取引等する場合」などの例外的な場合を除いては、雇用主は従業員の副業を制限しないことを示しています。
【2022年7月】副業・兼業の促進に関するガイドラインが改定
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、2022年7月に改定が行われています。
2022年7月の改定内容は、企業が労働者の多様なキャリア形成を推進することを後押しする目的で、以下の内容をガイドラインに盛り込みました。
- 企業が、自社のホームページなどで「副業や兼業を許容しているか否か」「条件付きで許容している場合の条件内容」を公表することが望ましいこと
- 労働者が自らのキャリア形成に取り組むにあたって、1の情報を参考にすることが望ましいこと
ガイドラインの改定によって公表対象となる副業・兼業は、他社に雇用される形での副業・兼業だけではなく、フリーランスという立場で請負・委任・準委任契約に基づいた業務を行う場合や、従業員自らが事業主になって独立・起業する場合も含まれます。
また、条件付きで副業・兼業を認めている場合は、条件内容を具体的に明示した上で、条件などに変更があった場合は速やかに公表内容を更新することが求められています。
大手企業で副業が推進された例
政府の方針に沿って、大手企業でも副業を解禁したり、社外チャレンジワークや社内ダブルジョブなどの制度を設けたりする例が増えています。
社外チャレンジワークとは、本業とは別に社外で仕事をすることで、スキルや経験を磨くことを目的とした制度です。社内ダブルジョブとは、本業以外にも社内で別の仕事をすることで、多様なキャリアパスを築くことを目的とした制度です。
例えば、以下のような企業が副業やチャレンジワークに積極的な姿勢を示しています。
- ロート製薬株式会社：ロート製薬株式会社は2016年から「社外チャレンジワーク」と呼ばれる副業制度を始めました。これは、社員が自分の可能性を高めて優秀な人材になることを目指すためです。副業制度を開始した理由は、国からの積極的な副業解禁の要請や残業時間が減って収入が少なくなったと感じる社員の声に応えたこと、日本の制度が副業や働き方改革に向けて変わっていくと予想したことです。
- ユニ・チャーム株式会社：ユニ・チャーム株式会社は2018年4月から副業制度を導入しました。これは、社員が異なる環境でスキルや専門性を磨いたり、人脈やチャンスを広げたりすることで、自分の力を高めて活躍の幅を広げることを目指すためです。これにより、社員の成長を支援しています。
- 日本郵政グループ：2022年11月に社外副業を容認する方針を発表しました。勤務時間外に加えて、週1日分までの勤務を自治体や企業での副業に充てられます。多様な働き方の支援と社員のキャリア形成が目的であり、社外副業の想定の一つとして自治体での地域開発があります。
これらの企業は、副業やチャレンジワークを通じて、従業員のモチベーションや能力を高めるとともに、新たなビジネスチャンスやイノベーションを生み出すことを期待しています。
副業のメリット：副業をすることで得られる5つの利点とは
副業をすることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか？
ここでは、5つの利点を紹介します。
1.収入が増えることで生活が豊かになる
一番わかりやすいメリットは、収入が増えることです。
副業をすることで、本業だけでは得られない収入を得ることができます。
これにより、生活費や貯金、投資などに充てることができます。
また、趣味や旅行などにもお金を使うことができます。収入が増えることで、生活が豊かになります。
2.スキルアップやキャリアチェンジに役立つ
もう一つのメリットは、スキルアップやキャリアチェンジに役立つことです。
副業をすることで、本業では学べない知識や技術を身につけることができます。
また、自分の興味や適性に合った仕事を選ぶことができます。
これにより、自分の強みや弱みを知ることができます。
スキルアップやキャリアチェンジに役立つことで、将来的に本業でも活躍する可能性が高まります。
3.やりたい仕事をすることで自己実現や満足感が得られる
さらに、副業をすることで、自己実現や満足感が得られることもメリットです。
副業をすることで、自分の好きなことや得意なことを仕事にすることができます。
また、自分の価値観や目標に沿った仕事をすることができます。
これにより、仕事に対する情熱や意欲が高まります。
やりたい仕事をすることで自己実現や満足感が得られることで、幸せ度が上昇します。
4.リスクヘッジになることで将来への不安が減る
また、副業をすることで、リスクヘッジになることもメリットです。
副業をすることで、本業だけに依存しない収入源を確保することができます。
これにより、本業で失敗したり、解雇されたりした場合でも、生活に困らないようになります。
また、副業では本業では経験できない様々な状況に対応する能力も身につけることができます。
リスクヘッジになることで将来への不安が減ることで、安心感が増します。
5.多様な人脈や知識を得ることで視野が広がる
最後に、副業をすることで、多様な人脈や知識を得ることもメリットです。
副業をすることで、本業では出会えない様々な人や情報に触れる機会が増えます。
これにより、新しい発見や学びが得られます。また、異なる分野や業界の人と交流することで、自分の視点や考え方を広げることができます。
多様な人脈や知識を得ることで視野が広がることで、創造性や柔軟性が高まります。
副業の注意点：副業をする際に気をつけるべき3つのポイントとは
副業にはメリットが多いですが、注意点もあります。副業をする際に気をつけるべき3つのポイントを紹介します。
就業規則や契約書で副業が禁止されていないか確認する
一つ目の注意点は、就業規則や契約書で副業が禁止されていないか確認することです。
前述したように、企業は従業員に対して副業を制限することができます。
そのため、自分の勤め先の就業規則や契約書をよく読み、副業に関する条項があるかどうか確認しましょう。
もし、副業が禁止されている場合は、雇用主に事前に相談するか、副業をやめるかのどちらかを選ぶ必要があります。
もし、勝手に副業をしていたことが発覚した場合は、懲戒処分や解雇などの重大な結果になる可能性があります。
本業に支障を及ぼさないように、労働時間や健康管理に気を付ける
二つ目の注意点は、本業に支障を及ぼさないように、労働時間や健康管理に気を付けることです。
副業をすることで収入やスキルが増えるのは良いことですが、本業をおろそかにしてはいけません。
本業はあなたの主な収入源であり、責任も重大です。
そのため、本業のパフォーマンスや品質を落とさないようにしましょう。
具体的には、以下のようなことに注意しましょう。
- 副業の労働時間は本業の労働時間以外に設定する
- 副業の仕事道具は本職場から持ち出さない
- 副業の仕事情報は本職場から漏らさない
また、副業をすることで体力や精神力が消耗する可能性もあります。そのため、健康管理も重要です。具体的には、以下のようなことに注意しましょう。
- 睡眠時間は十分に確保する
- 栄養バランスの良い食事を摂る
- 適度な運動や休息を取る
- ストレスや疲労を溜め込まない
副業収入が20万円を超えた場合は、確定申告を行う
三つ目の注意点は、副業収入が20万円を超えた場合は、確定申告を行うことです。
副業収入は、本業収入とは別に所得税や住民税が課されます。
そのため、副業収入が20万円を超えた場合は、確定申告を行って税金を納める必要があります。
確定申告は、毎年2月16日から3月15日までの期間に行われます。
確定申告の方法や必要な書類などは、国税庁のホームページや税務署などで確認しましょう。
まとめ
この記事では、副業禁止の背景や理由、副業解禁の動き、副業のメリット、副業の注意点などを解説しました。
副業をすることで、収入やスキル、幸せ度などが向上する可能性があります。副業収入が20万円を超えた場合は、確定申告を忘れずに行いましょう。
副業は、自分の人生を豊かにするチャンスです。
しかし、副業にはリスクもあります。
そのため、副業をする際には、自分の本業や勤め先の就業規則や契約書を確認し、雇用主との信頼関係を損なわないようにしましょう。
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